手の内の形と真に意識すべき機能-弓道から一旦遠ざかって見えてきたもの

(投稿:2018/02/06|更新:2022/03/16)

僕は高校の部活動で弓道を始めました。当時は本気でインターハイを目指し、土日も長期休暇も朝から晩まで日々練習でした。大学ではサークルで4年間続けてました。大学院や会社に入ってからは一旦遠ざかってしまっていますが、また近いうちに再開するつもりですし、その日をとても楽しみにしています。

当時はけっこう練習していましたが、その分日々の考えは凝り固まってしまっていたような気がします。遠ざかっている分きっと下手になってはいますが、距離を置いてみた分だけ視野が広がり、現役時代には気づかなかったことがふと見えることもあります。

今回は重要さが語られつつも具体性に欠けると言いますか、なんかスピリチュアルな語られ方が多い気がする「手の内」について考えたことを書いてみたいと思います。形も結果ももちろん大切ですが、限られた時間の中で練習する高校の弓道部や社会人弓道やらについては、「手の内の機能・目的」を考えながら弓を引くことが極めて重要です。この点について、具体的な考えを持ったうえで練習すれば、これまでとは違うスタンスで練習でき、手の内も少しはマシになるんじゃないかなと期待しています。

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※お世辞にもきれいとは言えない手の内

では、手の内には具体的にどのような機能と目的があり、手の内について重要だと言われるポイントがそれぞれどのように機能・目的と結びついているのか見ていきましょう。

※注意)弓道歴7年近くの若輩者の経験則です。皆様の上達のきっかけになれば幸いですが、間違った内容・考察不足部分もあるかと思います。あくまで参考程度とし、各自試行錯誤していってもらえますと幸いです。

目次

手の内について顧問や仲間に教わってきたこと

手の内って重要だと言われる割に、感覚が全てだったり正解が分からなかったり、うまく出来ない人にとっては「本当にそんなこと出来るのかよ」って疑心暗鬼になりますよね。そして諦めるわけではないですけど、そこそこのところでひとまず保留にする。

そうなる原因の一つに、「形と結果だけ教わり、表面的な形を真似する」ことしか出来ないような教わり方があるのではないかと思います。重要なのは皆さんはどのように教わってきましたか?

形については

  • 中指から小指まで、先端を揃える
  • 出来るだけ手の中の空間を小さくする
  • 手全体を締める
  • 握り込むのではなく、卵をつかむように柔らかく締め付ける
  • 角見で弓を押す
  • 角見で弓を受ける
  • 親指や人差し指の形
  • 手首の形
  • などなど・・・

そしてうまくいった際の結果についても

  • 弓がきれいに回って弦が手の甲側の腕に当って45°ほど跳ね返る
  • 矢が真っ直ぐ飛ぶ
  • 矢勢が上がる
  • 弦音がきれい
  • 長年やっていると手のひらの真ん中あたりに跡が残る
  • などなど・・・

※以上、形と結果は流派によって異なります。

もちろん形は重要です。形が不明なままでは適切な機能を発揮することなんて出来ないでしょう。

また、うまく出来た場合の結果を知っておくことも重要です。自分の射を省みて次に活かすためには、理想の結果と自分の結果との比較が必要だからです。

しかし、これら表面的な形のみを知った上で練習を積み重ねていっても、実感のこもらない練習となり、習得に時間がかかる、もしくは十全に機能しない手の内を身につけることになりかねません。形と結果に加えて、「その形である目的、手の内の機能」を意識して弓を引くことで、より細部までこだわった機能的な手の内を作れるようになります。

意識すべき手の内の機能とは

精神的・スピリチュアルな機能はまだまだ若輩者の僕にはよく分かりません。「手の中に宇宙を感じ、宇宙と一体化するのだ」などと語られるのが弓道の魅力ではありますが、「マジか」って感じですよね。単純にうまくなりたい初心者にはハードルが高すぎます。

手の内の機能の中でも大きなものは以下の通りだと考えています。

  1. 離れの際の弓のブレを抑える
  2. 離れの際に弓が回るようにする
  3. 離れの際の弓の力を十全に矢に乗せる

これらの機能によって、矢勢が上がり、矢が真っ直ぐ飛び、矢所が安定します。

では、それぞれの機能に手の内の何が影響しているのか考えてみましょう。

1.離れの際の弓のブレを抑える

「 手の内をしっかり締めろ」と言われますよね。あれは離れの際に弓が手の中で暴れるのを抑えるため、というのがあります。手の中で暴れてしまうと矢の発射方向にも影響しそうですよね。それに暴れる動き自体に無駄なエネルギーを使いそうです。

手の内を締めて弓を安定させることで、矢の発射方向を毎回一定にし、弓が溜めていたエネルギーを無駄なく矢に伝えることが出来るのです。

2.離れの際に弓が回るようにする

「角見で弓を押せ。角見で弓をしっかり受けろ。」と言われますよね。あれは離れの際に弓がしっかりと左回転するように、というのがあります。弓の弦は弓の中心少し右側を通っていますよね。少し右を通っているとはいえ、何もしなければ矢は弦と弓に挟まる形で曲がり、向かって右方向に発射されてしまいます。これを防ぐのが角見の最低限の役目です。弓が回ることによって、矢が弓に弾かれることなく飛んでいく、結果として真っ直ぐ狙い通りに飛ぶ、というイメージです。

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3.離れの際の弓の力を十全に矢に乗せる

「手の内、特に小指をしっかり締めて持っていかれないようにしろ」と言われますよね。あれは離れの際に弓の下側部分が跳ね上がってくるのを防ぐため、というのがあります。離れの際に弓の本弭(もとはず)が跳ね上がれば矢は上方向にすっぽ抜けますし、だからといって狙いを下げるのもバランスが悪いです。小指を締めることにより、本弭が跳ね上がるエネルギーを矢に乗せるイメージです。それによって弓のエネルギーを余すことなく矢勢に転換します。また、矢を真っ直ぐイメージ通りに飛ばすことが出来ます。

また、弓の力を十全に矢に乗せるためには、1,2で言及した「手の内の締め」「角見」も重要になってきます(理由は1,2で書いたとおりです)。

まとめ

最後の部分で言及したとおり、これらの形と機能は一対一対応ではなく、それぞれが互いに複合的に絡み合って機能していることも多々あります(例:「小指の締めが足りなければ弓の下部が跳ね上がり、それによって角見の押しが効きにくくなる」)。

しかし、このような基本的な機能について考えてみるだけでも、「矢所を安定させるためにも手の内の締めは必要。だとすると、ただ闇雲に締めるのではなく、弓がぶれないような締め方をすべきなのではないか。では今の自分の締め方は果たして弓のブレを抑えるために役立っているだろうか。・・・」などなど、自己点検がしやすくなり、より試行錯誤の上でよい手の内にたどり着きやすくなるのではないでしょうか。

また、これは手の内に限ったことではなく、射全体にも言えることです。意味不明になりがちな手の内での意識改革をきっかけに、射全体についてもより良い試行錯誤ができればいいなと思います。

それでは皆様、よき弓道ライフを!!

(おしまい)